NEWS

知ることで守れる命を、守るのか見ぬふりか

皆さんは下に書いてある特徴を持った感染症の名前をご存知ですか?

・初期症状が風邪と非常に似ている

・原因となる菌はごく日常的に私たちの周りにあるもの

・飛沫感染で簡単に感染

・感染後24〜48時間以内に5〜10%が死亡

・感染すると新生児は30%が死亡

・年齢関係なくいつ感染するか分からない

・感染の原因は未だ不明

実はこれ細菌性髄膜炎と言って、つい10年程前(2019年現在)まで日本でワクチン接種が認められていなかった病気なんです。こんな恐ろしい日本の状況を変えてくれた人に会ってきました。患者さんの保護者さんでもあり、NPO団体「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」の設立時から代表を務める田中美紀さんです。

風邪だよね?は文字通り「命取り」

「活動のはじまりは、息子の感染からでした。」

田中さんは目を潤ませながら絞り出すように話し始めました。

最初は本当に風邪のような症状だったようで、様子がおかしいと気付いた頃にはもう菌の進行がだいぶ進んでいる状況でした。細菌性髄膜炎の恐ろしいところは、異変に気付きにくいにも関わらず“発症から24時間が勝負”と言われるほど進行が早いことです。息子さんは命は助かったものの、細菌性髄膜炎によって引き起こされると言われているほぼ全ての後遺症を背負うこととなりました。

「母親として、知らないでいたことが情けない…」

田中さんは何度も悔やんだろう言葉を口にしました。そして色々調べていく内に、細菌性髄膜炎を予防するワクチンがあることを知ります。しかし当時、そのワクチンを接種することが日本で承認さえされていなかったのです。田中さんは怒りにも似た感情を抱いたと言います。「なぜ…」「どうして…」「もしもワクチンを受けられていれば…」。そんな言葉が悶々と頭を巡りました。

こどもたちを守る方法があることを知った田中さんでしたが、今から導入しても息子さんが感染する前に戻るわけではありません。また、ワクチンを日本に導入だなんて当然やったこともありませんでしたが、さんざん悩んだ末に「もうこんな思いをする親子をなくしたい」と険しい道を選びます。それは2006年春のことでした。こうして細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会を設立し、細菌性髄膜炎のワクチン接種承認とその定期接種化を目標に定めます。

定期接種ではないもの=必要ではないもの?

予防接種には、定期接種と任意接種とがあります。

定期接種: 法律に基づいて市区町村が実施。無料または低負担で受診できる。

任意接種: 希望者が各自で受ける。代金は自己負担。

つまり、定期接種はほとんどの方が受診するのに対し、任意接種を受ける方は少なく「定期接種でない=必要でないもの」という認識の人が非常に多いのです。

ワクチンでつくる日本の子どもたちの未来

今では当たり前に受けられるようになった細菌性髄膜炎ワクチン接種ですが、田中さんがやろうとしていたことはそう簡単なものではありませんでした。早速署名活動を開始して集めた約6万筆の署名を厚生労働省へ提出し、承認請願をするも音沙汰なし。ここで諦める訳にもいかず、次は自治体を通して国へ意見書を提出することでやっと返事が返ってきました。こうして、約半年で日本でのワクチン接種(ヒブワクチン)を承認させるも任意接種止まり。定期接種が可能になったのは2013年4月。設立から7年という長い年月を経てやっと会の目標を達成させました。

今では同会は細菌性髄膜炎の啓発活動や、細菌性髄膜炎にかかったお子さんをもつ親御さんたちを繋ぐ活動などを行なっています。今回の話に挙がった細菌性髄膜炎を防ぐワクチン(ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチン)は全ての細菌を網羅した万能のものではありません。つまりワクチンを受けていても感染症になる可能性はあるということを啓発する活動はとても意味のあることなのです。

田中さんに、大目標が達成された今でも活動を続ける理由を尋ねると、しばらく黙り込むものの「私の息子は後遺症の影響で知的の発達的に、私のやっている事を分かっているのかどうかもわからないんです。でも彼は私のそばでずっと見てくれていて…。彼が見ている限りは頑張ろうかなと思っています」と、最初は涙を潤ませるものの最後は笑顔で答えてくれました。

みんな必ず親がいて家族がいる、だから子どもに関係しない人はいない

さいごに田中さんから皆様へ1番伝えたい事を伺ってきました。

「知ることで守れる命がある、ということはみんなに知ってもらえたらと思います。寄付ももちろんすごく嬉しいことなんですけど、こういう色々な媒体で紹介していただけることで知ってもらえるというのがすごく大きいことだと思っていて、今までそういう子どもの病気だとか予防接種とかそういうワードに関心がない方にも身の回りに潜む菌とその感染症について知ってもらえるきっかけになるんじゃないかなと思っています。みんな必ず親がいて家族がいる。子どもに関係しない人はいないと思うんです。なので色んな方に知ってもらうことで間接的に伝わっていくといいなと思っています」

私自身もこの言葉を聞いて、知らないことほど怖いものはないなと思いました。とは言っても、何歳になっても全てを知り尽くすことはできません。その中で今、偶然出会った「知識」には何か意味があるんじゃないでしょうか?今日の一瞬一瞬、見たこと、感じたこと、知ったことを大切にしていきたいですね。もしご興味があればモノキフを使っていただけると幸いです。さいごまで読んでいただきありがとうございました。

頂いた寄付はこんなことに使います

・1万円の使い道

髄膜炎デーイベントのバルーンを飛ばして空にいる子どもたちに風船を届けるという趣旨のイベントにて使用する風船を購入したい。

・10万円の使い道

髄膜炎菌の啓発チラシを作って病院などに配りたい。

・100万円の使い道

もしもそれだけたくさん集まれば細菌性髄膜炎の後遺症を治す研究費にしたい。

モノキフしませんか?

リユースでNPOに寄付できる