取材記事

伝えるだけでは意味がない、実践することの意味――棚田を残すためにできること ~NPO法人 棚田LOVER’sについて~

ストラディバリウスといえば、奏でる音もさることながら価格も破格な楽器である。オークションでは10億円以上の値がつくそうだが、ここまで高値になるのは現代の技術では製造ができないからだ。このような失われた技術のことをロストテクノロジーというが、これは海外だけの話ではない。
例えば、戦艦大和の主砲がそうだ。大和が沈んだのは1945年。それから数十年しか経っていないが、現在は主砲を再現することができないのだという。軍事技術の発展とともに必要なくなり、失われるべくして失われた技術とも言えるが、もっと身近で失われつつあるものがある。それが棚田だ。

未来の子どもたちのために、棚田を愛し、棚田を育む

棚田というのは傾斜地に石垣を積んで作った段々の田んぼなどで、山間部の人たちが長く培ってきた農業技術、そして、文化の結晶である。そんな棚田が後継者不足によって失われつつあるのだが、それを必死に食い止めようとしている人たちがいる。それが『棚田LOVER’s』だ。

2007年に理事長の永菅さんが学生とともに立ち上げた団体。大学生の頃に農家の方から、あと5年で棚田がなくなってしまうかも、という話を聞いたのが、団体を立ち上げようと思ったきっかけだという。キャッチコピーは『棚田を愛し、棚田を育む ~未来の子どもたちのために~』。ただ、この団体が面白いのは棚田を残すだけを闇雲に叫ぶわけではないところだ。

伝えるだけでは意味がないので、育ててみた

「棚田のことを伝えていくことは大切ですが、伝えるだけでは説得力がないと思うので、団体でもお米を育てることにしました」と永菅さんは言う。

ただ、言うは易し行うは難し。初年度から痛い目に合った。鳥獣被害のことは頭で分かっていたつもりだが、収穫間近のある日、イノシシやシカが現れて稲を真っ逆さまにひっくり返して行ったのだという。その結果、収穫できたお米は手のひら1杯分。最初はそんな有様だったが、今では10年選手。現在は『棚田エコ学園』と称した今年で5年目となる本格的なお米を育てることを学ぶことができる講座や、棚田で穫れたお米と新鮮な野菜を通信販売する『農楽屋(のうがくや)』の他に、さまざまなイベントも行っている。

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