なぜ、大類さんはこのような選択をしたのだろう。このNPOをする前、緊急医療専門の団体に所属していたのだが、現場での活動を通して失望感のようなものを感じたかららしい。緊急医療はあくまでも緊急時のものだった。ずっと現地に滞在しているわけではない。2週間もすれば現地を離れてしまう。
「もちろん緊急医療も大切なものであるが、医療ができない環境で医者であるということに自分の無力さを感じ、もっと現地に残るものに注力したいと思った」と大類さんは言う。
例えば、このNPOが活動をしているブルキナファソのサポネ市での乳幼児の死亡率は9.6%。これは10人に1人の子どもが5歳までしか生きられない計算だ。この数字を見ると、むしろ医師が必要だと思えそうだが、そうとも言えない。実は死因の第1位はマラリアで、第2位は下痢疾患である。これらの病気に対して有効なのは医療ではない。それよりも保健衛生の方が大切なのだ。つまり、蚊帳の使い方を教えたり、飲み水を綺麗にすることなのだが、これは医師ではなくてもできる。