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みんなの「居場所」、持続可能な多世代共生の場を

就学前の子供から高齢者まで、NPO法人ケアットが運営する施設には幅広い世代の人々が集まる。学童保育や介護施設とは少しちがう、利用者たちの「居場所」。そのひとつであるカフェ「はじめのいっぽ」は、筆者が想像していたとおりの温かい雰囲気と、想像していた以上の賑やかさに満ちていた。室内にはアンティーク調の家具――購入したものもあれば、利用者から提供されたものもあるという――や工芸作品が並び、「インテリアにこだわった、お洒落なカフェ」といった趣だ。木目のテーブルが並ぶ柔らかな空間の中で、カフェに訪れた人々とスタッフが気さくに挨拶を交わし合う。

好きなことを見つけられると、自己肯定感に繋がる

そんな中、岡本さんがひときわ楽しそうに接客をするひとりの青年を指し、「あの子は以前は引きこもりでね、大変だったんだから」と笑うので驚かされた。利用者が自分の強みを見つけて変わっていく様を見られることが、岡本さんが活動する上でのモチベーションのひとつであるという。

「接客をするとか何かを売るとか、好きなことを自分から見つけられると、それは楽しみになるし自己肯定感にも繋がるんです」

カフェに訪れた高齢者たちは、椅子やソファに腰かけて自由に好きな時間を過ごす。介護施設などで決められたイベントに参加することに抵抗のある人でも、ここでなら自分たちのペースで他者との交流をはかることができる。

学びと楽しみを見出しているのは利用者だけではない

「デイサービスというよりは、紳士淑女の社交場っていう感じでしょう」と岡本さんは楽しそうに笑う。金曜日の夕方に行われる「つながり食堂INはじめのいっぽ」では、子供から高齢者までの様々な世代の人たちが集まり、食事を共にする。ケアットが大切にしている多世代共生の一環である。多世代共生によって各世代にもたらされるメリットについて、岡本さんはこう語る。

「いろんな大人に触れることによって、子供たちは親に縛られずに自分を確立できます。親に対して『それは子供には悪影響ですよ』って指摘するより、子供自身に力をつけさせた方が効果がある。逆にお年寄りのひとたちも、『子供たちにエネルギーがもらえる』と喜んでいます」

交流によって学び、楽しみを見出しているのは利用者の子供たちや高齢者だけではない。彼らの何気ない言動から、岡本さん自身もしばしば学びや気づきを得ているという。利用者にとってだけでなく、職員にとってもケアットは「居場所」なのだ。そんな「居場所」を持続可能なものにしていくことが、ケアットの課題であり、利用者や職員に対する責任である――そう語る岡本さんの明るい声と表情のなかにケアットへの思いが滲み出ているような気がして、胸を熱くせずにはいられなかった。

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