父が旅立ち、母の介護をつづけるなかで、少しでも認知症の進行を抑えながら楽しめるようなことを母にさせてやれないか……、そんな思いが芽生えてゆく。そして見つけたのが臨床美術だった。
「母は40年くらい和紙のちぎり絵をやっていたんです。病気が進めばできないことは増えていくけど、ちぎり絵はできた。好きでつづけていたことっていうのは、忘れずにできるものなんですね」
そうして母とともに、ちぎり絵をしていくうちに、自分自身がアートに癒されていることに気がついた。癒しの時間、嫌なことを忘れる時間を作ることで、介護をするときも気持ちに余裕が出てくる。介護をする人もされる人も癒すことのできる臨床美術。これで人助けができるならぜひともしてみたい――こうして、細見さんの活動が始まった。