ところで、このNPOの農業体験は、一般的に想像されるようなものとは大きく違っている。1日だけ田植えに参加してみる、などといった一過性のものではなく、週に1回や月に数回など、継続して参加できるのが大きな特徴だ。イベントを作ることではなく、場づくり(コミュニティ作り)を目的としているからだ。利便性、効率化が重視される現代社会で希薄になったコミュニティを再び形成するために、みんなで協力しながら田んぼを作る「結」の精神が重要な役割を果たしてくれる。手で苗を植え、手で草を刈る――そんな「ちょっとの不便さ」があるからこそ、人々は支え合い、つながりを結ぶことができるのだ。
「そうやって大人が活き活きと作業をしているところを子供に見せるのも教育だと思ってます。大人がワクワクしている姿を見れば、子供も将来に希望を見出せるから」
どこまでも型にとらわれない、山口さんのヴィジョン。そのコミュニティがどう繋がっていくのか、どこまで広がっていくのか。それを想像してこちらがワクワクしてしまう、そんな楽しい取材となった。